東京高等裁判所 昭和54年(ネ)2345号 判決
共有賃借権の持分割合を含めて持分権の確認を求めるためには、本来、単に賃借権の共有者を相手方とするのみでは足りず、賃貸人をも相手方とすることが必要である。けだし、賃貸人との間においても確認しなければ、窮極的には当該持分権の内容は定まらず、実益がないからである。しかし、紛争が賃借人同士間においてのみ発生し、その間で権利関係が確定すれば紛争が解決される場合には、賃貸人を加えることなく、賃借人同士の間で共有持分権の確認を求めることも許されるというべきところ、既述のように、本件土地の賃貸人と控訴人との間においては、控訴人が本件土地全部の賃借権につき二分の一の持分権を有することについて争いがないのであるから、控訴人は本請求につき被控訴人のみを相手方とすれば足りるのである。
控訴人は、本件土地を東西に二等分したうえ、西側の別紙目録二記載の土地部分を控訴人の単独賃借とするよう本件共有賃借権の分割を請求するので検討する。
(一) 前述(二の2(一))のように、本件地上建物は、共有建物、控訴人所有(もと敬太郎所有)の区分所有建物、被控訴人所有の区分建物に区分されているところ、控訴人所有建物の二階の相当部分が被控訴人所有建物の一階の上にあり、被控訴人所有建物の二階の一部が控訴人所有建物及び共有建物の一階の上にあり、これを土地の側から見ると同一土地部分上に控訴人所有建物と被控訴人所有建物が重層的に存在しており、右土地部分は、これを敷地とする各区分所有建物にとっては必要不可欠の共用敷地となっているのである。また、本件共有建物の敷地も、重要な共用部分である。
右のような事実関係のもとにおいては、敷地の賃借権を共有する地上の各区分建物の所有者は、事柄の性質上、特段の事由のない限り、敷地の賃借権の分割を請求することは出来ないものと解するのを相当とする。けだし、共有物分割請求権は共有者の基本的な権利であり、最大限に尊重されるべきではあるものの、前述のような事実関係のもとにおいては、敷地賃借権は地上の区分所有建物(共用の建物部分もあれば、それを含む。)の従たる権利であるのに、敷地賃借権の分割により敷地上にある他の共有賃借人の区分所有建物の所有権は敷地についての不測の占有権原の得喪により重大な損害を蒙ることになるからである。
なお、分割請求を許されないとする点においては、右共有関係は、いわゆる合有関係と異ならないかの如くであるが、地上建物が滅失、朽廃したときには本来の分割請求ができないとはいえない等のことを考慮すると、本件共有賃借権を直ちに合有関係というのは相当でない。
(田尾 内田 藤浦)